ジャッジからの講評(3日目)
アイデアピッチからどれくらい化けるものなのかを楽しみに来ました
松島三兒さん
長浜バイオ大学バイオサイエンス学部教授
私は最初の日のアイデアピッチから聴かせていただいて、それがどれくらい化けるものなのかなっていうのを楽しみに今日来させていただきました。で、これはまったく私の個人の受けた印象なので、そういうつもりで聞いてください。
優勝された「Korenani」のチームは、最初のアイデア「代筆屋」から思い切って変えられ、よりニーズがある方に持って行かれた。あと、もちろん精度の問題はあるけれども、すぐ始められそうだなというのが一つ感じられたのと、将来的な展開可能性がこの6つのなかで一番あったんじゃないかな、と評価をさせていただきました。
「フリー・フリースクール」さんは、一番最初に聴かせていただいたのと、残念ながら今日聞いて何が変わったんだろうっていうのが正直なところだったんですね。だから54時間の議論のなかで、何かもっと基のアイデアというのをよりブラッシュアップしていくというか、より可能性のある方に持っていくようなことが起きたら、もっとよかったなというのが印象です。
それから「CHIRASHI de Nagahama」さんはニーズが結構高いところを選ばれたんじゃないかなという風に思っています。これも結構今後の展開というところで結構面白いビジネスになるかもしれないなと思っています。
「Bacana Pessonas」さん、ここはちょっとコミュニティとつなぐビジネスモデルが成り立つのか?というのが若干私のなかでは心配になったところですね。
それから「TrusTrip Nagahama」さんは、根底の信頼づくりというアイデアはいいと思いますが、ビジネスの形としてはユニークじゃないなというのが印象ですね。私がこの間カナダに行ったときも日本人の人がガイドしてくれたし。そういう意味では結構ありそうなモデルです。
あともう一つの「Kulturo」。これは結構アイデアとしては面白いんじゃないかなと思ったんですが、これを使うとなんで生活費が安くなるのか?というところが、ストンと落ちなかったというのが私の印象です。
ソーシャルビジネスを考えるうえでの3つのポイント
山元圭太さん
株式会社PubliCo 代表取締役COO
NPO法人日本ファンドレイジング協会 理事/認定ファンドレイザー
おつかれさまでした。今回は「Change Maker」いわゆる社会起業、ソーシャルビジネスというテーマで、そのポジションで呼んでいただいてますんで、そういった観点でお伝えしたいと思います。
通常のビジネスと違ってソーシャルビジネスということなんで、総括して3点、ポイントをお伝えしていきたいと思います。
一つが「受益者を中心にビジネスモデルというのは描いてください」ということです。通常のビジネスでもステークホルダーマップというのは作られると思うんですが、あれって大体自社が中心になってますよね。ソーシャルビジネスはそうじゃないんです。受益者が中心なんです。で、受益者のまわりにどういう人たちがいて、自分たちがどういう役割を果たすかっていうことが知りたい。
僕が質問のときに「実際受益者の人は何て言ってるんですか」「ターゲットの人に聞いたんですか」「困りごとベスト3って何なんですか」っていうことを結構こだわって聞いてたと思うんですが、皆さんが作られたものを使うことによって、受益者の人がどう良くなっていくのかっていうストーリーが知りたいなっていうことを思いました。なので、自社じゃなくて、受益者中心にもう一回捉え直してくださいっていうこと。
2点目なんですけど、「コレクティブコンパクト」っていう考え方があります。日本語でいうと「集合的価値」ですね。どういうことかっていうと、ソーシャルビジネスって自分たちが活躍しなくてもいいんです。受益者の人が良くなったり、問題が解決したりミッションが達成できれば、別に誰がやったっていいわけですね。自社よりもうまくできる人がいたらその人たちがやってくれたらいいわけですよ。本当に皆さんが成し遂げたいと思われているミッションを実現する際、皆さんだけじゃなくて「他の人たちと手を組めないのかな」っていうのは、もっと考えていただくと更によかったかなと思います。
例えば今日発表された6プランのなかでも、例えば「TrusTrup Nagahama」さんと「Kulturo」さんと「Bacana Pessoas」さんとかで組んでみると、例えば住んでいる人たちのつながりや信頼、誇りっていうことを醸成するために、バラバラで活動されるんじゃなくて、この地域に住む日本人ボランティアとベテランの外国人がペアになって、新しく入ってこられた外国人の方のところに地元の料理を教えに行ってあげるとか、一緒にそこでランチ会するとか、ということとかもあっていいんじゃないかなって思ったりするわけですね。他にも例えば「Korenani」さんと「CHIRASHI de Nagahama」さんと「Kulturo」さんとで、別々のサイトサービスをやるんじゃなくて、「来日したばかりの外国人の困りごとベスト5が解決できるサービス」を一緒に作ってみたりしたら、ここだけに登録しておけばこの地域ではベスト5全部スッキリします、っていうこととかも出来るかもしれないんですよね。
だから自分が解決しなくていいんですよ。そうじゃなくて誰かが解決してくれることに対して自分が最大限貢献できることは何かっていう観点で考えていただくと、更に面白い形になるんじゃないかなっていうのが二つめ。これが「コレクティブインパクト」っていいます。
で、3点目なんですけど、「多様な財源で考えてみる」っていうこと。今日皆さん出していただいたのって、当然、事業収入、ビジネスでの収入、売上ですよね。でもソーシャルビジネスのいいところって、財源の多様性にあるんですね。要は「寄付」「会費」「事業収入」「助成金」「委託金」っていう、5大財源と呼ばれる財源があります。
今日皆さんが考えてくださったのは、殆ど事業収入だけなんですね。「クラウドファンディング・寄付型」って書いてくださったところがありますけど、厳密にいうとあれは寄付にはならず、売上として計上しないといけなくなります。本当の純粋な寄付っていうのをもっと取りにいけたかもしれないんですね。
皆さんせっかく社会性の高い事業をされようとしているので、「地場で外国人雇用比率の高い企業さんに寄付をお願いしに行く」とかっていうのはできたかもしれません。或いは地域住民の人たちに「月々500円でいいんで個人寄付会員になって応援してください」っていうこともできたかもしれません。或いは「市から受託事業をとってきてやります」っていうこともできたかもしれません。そういう多様な財源を考えていくと、より色んな展開っていうのも考えられたんじゃないかなと思います。
1点目「受益者を中心に」、2点目が「コレクティブインパクトで」、3点目が「多様な財源っていうのを考えてみる」と、更に面白いことができるんじゃないかなっていう可能性を感じれた時間でした。
最後に僕の師匠的な人がよく言っている言葉をお送りして終わりにしたいと思います。「皆さんは社会に良さそうなことをしたいのか、社会を良くしたいのか、どっちですか」っていう問いです。別にどちら側を選んでいただいても良い・悪いではないんですが、ただ社会・地域を本気で良くしたいって思う人たちが増えないとマズい状況が、いま日本各地で起こっていると思います。で、もし本気で良くしたいっていう風に思われる方々の集まりであれば、きっとこの事業プランがうまくいかなかったとしても、きっとこの地域・長浜は、いい地域になっていくんだろうなって思います。
「何をするか」以上に「誰とするか」も非常に大事
茂森仙直さん
株式会社アクアリング 取締役兼、鶴舞ラボ/コミュニケーションデザイングループ リーダー
皆さま、改めましてお疲れ様でございました。僕は普段は Startup Weekend はコーチ側についてまして。なので54時間、大体皆さんと会話をしながら色々調整してやっていく立場なんですけど、今日ジャッジの方に行ってみて、色々気づくことも沢山ございまして。そういった中の何点かをお話したいと思っているんですけれども。
まず皆さんは今回どういう姿勢で臨まれたのか。コーチをやっているとよく言われるのが「これってゲームなんですか?」「本番なんですか?」と。結構どっちか迷われているケースがございます。Startup Weekend に関しては、僕は初めゲームだと思ったんですけど・・・これ実際は本番です。皆さんが実際に独立開業するとき、手段を選ばないと思うんですよね。極端な話、今日アイデアに困ったとなったら、誰に聞いてもいいわけですよ。この分野を専門にやってる奴に電話をして「どう思う?」ってビジネスプランを聞いて、それを別に実現してもいいわけですよね。
でも、こういう場でメンバーを決められると、「このメンバーの中でアイデアを決めなきゃいけない」っていう強制的な固定観念に襲われてしまうんですけど、実際そうではないんですよね。その点において、皆さんたぶんアイデアがシュリンクしちゃって、本当はもっと面白いアイデアが出たかもしれません。今後もしこの Startup Weekend に参加されたら、そういった観念で捉えていただければいいかなという風に思ってます。
で、あとは最近、僕が会社の経営とこの活動で学んだこと、すごい月並みなことを言うんですけど・・・、新しいことをやっていくとき、何をするかっていうのも大事なんですけど、「誰とするか」っていうのも非常に大事なんですよね。
人というものに対して非常に着目してまして。知り合いのベンチャーキャピタルの方が「良い企画というのは考える人がたくさんいる。でも、それを遂行できる、やりきるっていう奴は少ない」ということを仰ってまして。最近のアメリカの投資でも、そういった「良い企画」よりも、「こいつは本当にやりきるのか」「こいつは本当に情熱をもって世の中を変えたいと思っているのか」といったところでお金を出すといった志向に変わっているというのをよく聞きます。
なので、僕も Startup Weekend で参加することによって色んな方々とたくさん会うんですけど、同じ目的に対して集まる場なので、こういった仲間をつくることによって、ひょっとしたら点の活動が面になったりするかもしれませんので。今日の出会いとかこれからの出会いとかいうところも、皆さん非常に大事にしていただいて、今後の活動につなげていただけたらと思いました。